JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会)有水晶体眼内レンズ情報

  • JSCRSの調査発表

国内でのICLの現状はどうなっているのでしょうか?

有水晶体眼内レンズ(phakic IOL)は、世界的にさまざまなタイプのレンズが販売されていますが、国内で承認されているレンズは後房型有水晶体眼内レンズのICLのみです。ICLは、国内で2003年から臨床治験を行い、2010年に厚生労働省にて認可されており、2014年に最新型のHole ICLが承認されています。ICLは臨床成績が非常に良好であり、特に最新型レンズが登場してから、術中・術後合併症のリスクが大幅に軽減されたことで、全世界的に手術件数が増加している術式です。国内における手術件数も確実に増加していますが、これまでICL手術成績について全国的な調査はなされていませんでした。そこで学会主導によるICL手術の正確な実態把握を行うことを目的として、JSCRSワーキンググループでは、2015年1~12月に行った屈折矯正手術の安全性、有効性、予測性、合併症、満足度について前向き多施設共同研究を行いました1)

  • 日本白内障屈折矯正手術学会ワーキンググループでは、2015年1~12月にかけて国内42主要施設において屈折矯正手術を施行した15011眼を対象として、3か月経過観察を行いました1)
  • ICL手術は全体の9%(1319眼)を占めていました。
  • 平均裸眼視力は1.41、平均矯正視力は1.62と良好でした。
  • 目標屈折度数に対して±0.5D以内が88%、±1.0D以内が99%と良好でした。
  • 平均屈折変動は0.01Dと安定していました。
  • 感染症、白内障進行、著明な角膜内皮細胞の減少など、重篤な術後合併症は全例認めませんでした。

ICLは本当に安全で有効な手術なのでしょうか?

ICLは従来レンズの時から術後視機能は良好でしたが、白内障進行にて手術が必要になるリスクが0~1.8%2)とありました。しかしHole ICL(ICL KS-AquaPORT)の登場以降はそのリスクは大幅に改善しより安全性の高い手術となっています。またICLは何年経過しても眼内から摘出することが容易でありリバーシブルな術式であることも安心な手術との要因といえます。

  • 日本白内障屈折矯正手術学会ワーキンググループでは、2014年1~12月にかけて国内45主要施設においてICL手術を施行した1001眼を対象としたアンケート調査をしました3)
  • 裸眼視力1.0以上の症例が94%、矯正視力1.0以上の症例が99%でした。
  • 目標屈折度数に対して±0.5D以内の症例が83%、±1.0D以内の症例が96%と良好でした。
  • 屈折変動として±1.0D以内が99.1%と安定していました。
  • レンズ交換を要した症例は1.0%であり、術後感染症、白内障進行、著明な角膜内皮細胞の減少など、重篤な合併症は全例認めませんでした。

ICLは世界的にも一般的な手術なのでしょうか?

ICL手術は海外でも一般的に行なわれている手技であり、現在主流となっているHole ICLは75か国以上で承認を受け、累計100万眼以上の手術実績があります。最新のHole ICLについてのメタアナリシス*によれば4)、安全係数**が1.15(対象4196眼、平均観察期間14か月)、有効係数**が1.04(対象1905眼、平均観察期間12.5か月)であり、角膜内皮細胞密度減少率は2.6%、白内障進行により手術が必要となった例は0%であり、99.4%の症例で高い満足度を得ていると報告されています3)

写真:地球儀

注釈

*メタアナリシス(meta-analysis)
複数の研究結果を統合し、分析するための手法であり、根拠に基づいた医療(EBM:evidence based medicine)において、最も質の高い根拠とされています。
**安全係数・有効係数
屈折矯正手術の視機能評価として用いられる客観的な指標です。安全係数とは、術後の眼鏡矯正視力を術前の眼鏡矯正視力で割った値であり、1.0を超えると術後が術前より矯正視力が良くなっていることを意味します。有効係数とは、術後の裸眼視力を術前の眼鏡矯正視力で割った値であり、1.0を超えると術後の裸眼視力が術前の矯正視力より良くなっていることを意味します。両指標とも1.0を超えており、屈折矯正手術として安全性や有効性が非常に高いことがわかります。

文献

  1. Kamiya K, Igarashi A, Hayashi K, Negishi K, Sato M, Bissen-Miyajima H: Survey Working Group of the Japanese Society of Cataract and Refractive Surgery. A Multicenter Prospective Cohort Study on Refractive Surgery in 15011 Eyes. Am J Ophthalmol. 2017;175:159-168.
  2. Packer M. Meta-analysis and review: effectiveness, safety, and central port design of the intraocular collamer lens. Clin Ophthalmol. 2016 Jun 9;10:1059-77.
  3. Kamiya K, Igarashi A, Hayashi K, Negishi K, Sato M, Bissen-Miyajima H; Survey Working Group of the Japanese Society of Cataract and Refractive Surgery. A Multicenter Retrospective Survey of Refractive Surgery in 78,248 Eyes. J Refract Surg. 2017;33:598-602.
  4. Packer M. The Implantable Collamer Lens with a central port: review of the literature. Clin Ophthalmol. 2018 ;12:2427-2438.

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