JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会)有水晶体眼内レンズ情報

  • ICLの合併症

ICL手術後はドライアイになりますか?

ICLはレーシックなどの角膜で行う手術と異なり、角膜の神経へ与える影響はとても小さいです。
しかし、手術時の消毒、術後点眼などの影響で術後1ヶ月程度は乾燥感を感じることもあります。術後は必要に応じて保湿用の点眼薬の使用をすることで症状の緩和が得られます。

手術後のグレア・ハローってどういうことですか?

手術後に暗いところ(夜間など)で光をみたときに、非常にまぶしく感じてみえにくくなったり、光の周囲に光の輪がみえたりすることがあります。前者をグレア、後者をハローとよびます。このうち、ICL術後、特に感じるのはハローです。瞳の大きさがICLのレンズの部分より大きくなったときに感じる事があります。しかしハローで夜間見えづらいと訴えられる方は少なく、多くの方は時間と共に気にならなくなることが多いです。

ICL術後に感染を起こすことはあるのでしょうか?

ICLは外科手術ですので、術後感染をおこす可能性はごく稀にありえます。これまでの調査で6000眼に1例ほどの割合といわれています。しかし、ICLによる眼内炎は適切に処置をすれば重篤になることは稀であることも分かっています。眼内炎を起こした場合は、ICLの摘出が必要になることがあります。ICLは眼内手術ですので、術前後の抗生物質の点眼で予防することが重要です。

ICL術後に失明する可能性はあるのでしょうか?

ICL手術で失明することはまずありません。
ただしごく稀ですが術後矯正視力が低下する可能性はあります。その原因には前述の感染症などがあります。

ICL術後に再手術が必要になる事がありますか?

ICLは非常に精度が高い手術で、多くの人が手術後に眼鏡やコンタクトレンズに依存せずに裸眼で生活できるようになります。しかし、術前検査の誤差や予測精度の問題で全ての人が裸眼生活に必要な視力になるとは限りません。そのため手術後に近視や乱視が残ったり、または時として遠視になる場合があります。その際はICLの交換をすることで裸眼視力を更に向上させることが可能です。

また、ICL手術を受けたことによって近視の進行が止まるわけではありません。長期間の経過で手術を受けなくても近視や乱視の度数が変化することがあります。ICL手術後長期間経過して度数が合わなくなった場合は、ICLの交換手術もしくは角膜が問題ない方はレーシックなどの角膜の手術で調整することが可能です。

ICLは眼内で癒着などを起こさず、安定した状態を保つことが分かっています。これは利点ですが、一方癒着を起こさないために、レンズが眼内で回転する場合が稀にあります。乱視矯正でない近視矯正だけのICLであれば問題ありませんが、乱視矯正ICLの場合は、乱視矯正能が低下し、見えづらくなることがあります。この場合はICLを再度本来あるべき位置に戻す整復手術が必要になります。また整復手術を行っても、回転してしまう場合はICLのサイズを大きくしたもので入れ替える手術が必要になることがあります。

ICL術後の過矯正ってなんですか?

過矯正とは読んで字のごとく、矯正し過ぎてしまった状態です。ICL手術を受ける際に、遠くの視力を良くすることだけを目標にして、最も遠くが見えるように矯正した場合に起きやすい合併症です。過矯正は術前検査で目標度数を遠視にならない度数に設定することで多くの場合は防ぐことが可能ですが、検査にはどうしても誤差が生じることがあります。もし遠視になってしまって眼精疲労や近くが見づらくなる場合は、ICLの交換手術によって適正な度数に変更することが可能です。

ICL術後は老眼になりやすいですか?

老眼とは・・・

目という器官はとてもよくできていて、オートフォーカスのカメラがピントを合わせるように、瞬時に対象物に焦点を合わせて、像をはっきり見えるようにしてくれます。若くて視力のいい人なら、遠くの景色を眺めた後、すぐに手元にある新聞を読むことができます。このように、見る対象と目との距離によって焦点を自在に合わせる力、これが「調節力」です。この力は無意識のうちに働くため、多くの人はそれが自分の目に備わっていることに気付かず過ごしています。

さて、この調節は、目の中のレンズの役割を担う水晶体が、毛様体筋という筋肉が収縮したり弛緩したりすることによって、その時々で厚みを変え、巧みにピントを合わせることにより行われています。遠くをボーッと見ている時には毛様体筋は弛緩しており、近くのものを見ようとすると緊張します。年齢とともにこの筋肉は弱り、また水晶体も固くなっていくので、「調節力」は少しずつ確実に衰えていきます。この低下は6歳頃から徐々に起こり、40歳を過ぎた頃には、30センチくらいの読書距離にピントを合わすために必要な調節力がなくなってしまい、「老眼」を自覚します。特に遠くまでよく見える「遠視」の人は、常に調節力を使っていますので、通常より早く老眼を自覚します。

よくICLなどの近視矯正手術をすると早く老眼になると言われていますが、決してそのようなことはありません。しかし、強く矯正しすぎて、いわゆる「過矯正」になり遠視になってしまうと、早い段階で老眼を自覚することになります。そればかりか、遠視になると、目はいつも一生懸命ピントを合わせて見なくてはなりませんので、常に緊張状態となり、眼精疲労や頭痛が起こりやすくなります。
事前の検査に充分な時間をかけて行い、「過矯正」にならないよう適切な度数の矯正を行うことが望まれます。また、40歳を超えたいわゆる「老眼年齢」に差し掛かった方は、遠くが見えることがご自分の日常生活に本当に便利なのか、よくよく考える必要があります。

写真:老眼の女性

ICLの手術後に疲れ目(眼精疲労)にならないか心配です。

現代生活では、パソコンやスマートホンなど目を酷使しやすい道具があふれています。そしてパソコン・スマートホン・読書などは、すべて近い所にあるものを見るという作業なのです。人間の目は遠い所を見ているときにリラックスしていて、近い所を見るときには目の中の筋肉を緊張させているのです。眼科では疲れ目の事を眼精疲労といいます。眼精疲労と言えども、放置すれば頭痛・肩こり・吐き気・目の痛みなどに発展して、日常生活にも支障をきたす状態になることもあります。

基本的にICL手術を受けたからといって眼精疲労になることはありません。先ほど説明した遠視の状態にならなければ、ほとんどの方は眼精疲労になることは無いと思います。しかし、普段から眼精疲労になりやすい方は、術後も同様になる可能性がありますので、主治医の先生と相談して術後どの程度の度数に合わせるのか、シミュレーションも行って相談するのがお勧めです。特に1日中パソコンを使用したり、近くで細かいことを長時間行う職業の場合は注意が必要です。

ICL手術後、白内障になりやすいと聞きました。

ICLは水晶体の近くに挿入するため、術後に白内障が稀に起こることがあります。中心部に孔が無い以前のモデルのICLでは、1.1〜5.9%の白内障が起こると報告されていますが、中心部に孔がある現在主流のホールICLでは、目の中の水の流れが、術前と同じように保たれるため、ホールICLが使われるようになってから白内障の発生率は0.49%と非常に低くなっていることが報告されています。ICLは近視が強い方が受ける事が多く、近視が強い方は白内障が起こる年齢がそうでない方に比べて若いことが知られています。このため、長期の経過の中で起こる白内障はICL手術によるものか加齢によるものかはっきりしない場合もあります。

ICL手術後に加齢などで白内障になった場合は、ICLを摘出した後、通常の白内障手術と同じ様に手術が問題なく行えることが分かっています。

乱視矯正ICLが術後に回転したらどうなりますか?

乱視には乱視軸と呼ばれる方向があります。乱視矯正ICLは患者さん毎の乱視軸に合わせて、作成されたものです。ICLは眼内で炎症や癒着をおこさないなど、生体適合性が高いことが長所ですが、それが故に術後にICLが眼内で回転してしまうことがあります。乱視矯正なしのICLであれば問題ありませんが、乱視矯正ICLの場合は回転してしまうと乱視矯正効果が弱くなってしまいます。この場合、まず最初にICLの位置を元に戻す整復術を行う事が多いです。またそれでも回転してしまう場合は、サイズの大きいICLに入れ替えて回転しづらくする方法があります。

ICL術後は緑内障になりやすいですか?

ICL手術を行うと術後一過性に眼圧が上がる可能性があります。このため、術前から緑内障の方は視野欠損が悪化する可能性があるため、手術は慎重に考える必要があります。 ICL手術後長期に緑内障のリスクが高くなることはありません。ただ、元々近視が強い方は緑内障の発症リスクが高いことが分かっていますので、注意が必要です。

ICL手術後に目を強く打撲したらどうなりますか?

ICL術後に強く目を打撲すると、ICLが固定位置から外れて脱臼することがあります。
この場合は、速やかにICLの整復手術が必要となります。ICL手術後で目を強く打撲した場合は、念のため診察を受けることをお勧めします。

Copyright ® JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会)有水晶体眼内レンズ情報. All Rights Reserved.